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Innovative Story

NISSHAの開発者たちのものづくりに対する思いをご紹介します。

産業資材開発秘話

~10年越しの「夢のデザイン」を実現 世界のデザイントレンドをリードするものづくり~

 NISSHAが手がける産業資材事業のなかでも、近年大きく成長している分野が、国内外の大手自動車メーカーがデザインする自動車の内装部品の生産だ。最近、特に富裕層向けのモデルで洗練されたデザインが求められる中、各メーカーが内装部品に求めるレベルも日に日に高度化している。ある世界最大手の自動車メーカーのデザイナーから持ちかけられた大型サイズの内装パネルのオーダーはこれまでの自動車業界の常識を覆すものだった。産業資材のプロジェクトチームはこの困難なオーダーにどう立ち向かい、要望をクリアしていったのか。営業・開発・生 産・品質保証を担当したチームの5人のメンバーに話を聞いた。

最先端のデザインを託された時
頭に浮かんだ技術者への信頼感

日本を代表する大手自動車メーカーの社内デザイナーから、NISSHAで産業資材の自動車向け製品営業を担当する谷口に、ある車種の最上位モデルで、ユーザーにとって最も印象的な位置に取り付けるインストルメントパネル(*1)(以下、「インパネ」と記載。)の相談が舞い込んだのは、2012年の夏のことだった。

*1 インストルメントパネル:カーナビやエアコンのスイッチが設置される中央部から助手席側のエアコン吹き出し口にかかる横長状のパネル

「その車種は、5年後には世界100カ国以上で発売されることが決定している、同社のグローバル営業戦略上極めて重要な案件の一つでした。NISSHAは、その車種の1つ前のモデルの内装部品を任せてもらっており、2代続く形でニューモデルのご相談をいただいたことは、非常に嬉しくありがたいことでした。同業他社に比べるとNISSHAが自動車の内装部品を手がけるようになってまだそれほどの歴史はありません。それだけに世界最大手の自動車メーカーから2代続けてのオーダーは、我々の技術力が高く評価されていることの証しであると感じたのです。」

 しかしその時聞いたデザイナーの要望は、大いに谷口を驚かせた。自動車のフロントパネルに組み込まれる8インチのカーナビ、エアコン、オーディオなどの装置と操作パネルの全てを、1つの継ぎ目もない、シームレスなデザインにしたいというのだ。
「最初のオーダーでは、パネルの長さが1メートルを超えていました。当社がこれまで手掛けた自動車のインパネの中でも、間違いなく最大級です。しかし先方からは『難しいことは十分わかっているが、今回のデザイン一新でユーザーに驚きを与えるためには、どうしても途中で部品を切らずに実現したい。何とか検討してくれないか』と熱心に要望されました。」
とはいえ、谷口も営業として自分が会社の顔であるという自覚がある。例え今ここで難しいことを承知で検討を引き受けたとして、後で「やはり無理でした」では、今後の受注にも影響するだろう…。それならば、ここは素直にお断りするべきか…
諦めるという考えが頭をよぎった矢先、ふと思い出したのは今まで数々の困難な仕事を通して感じていた技術メンバーへの谷口の強い印象だった。

「どんなに難しくとも、NISSHAのエンジニアなら、『できない』とは言わないはずだ」

「実は私は中途採用でNISSHAに来ました。そんな私にとってNISSHAのエンジニアに対して、大いに感心していたこの印象が浮かんだのです。今回のように、自動車業界で誰もやったことがない難しい部品であっても、彼らに相談すれば『どうすればできるだろう』と前向きに議論を始め、最終的になんとか形にしてくれるはずだ。そんな強い信頼感があったからこそ、私はお客さまに対して前向きに検討させてください、と言い切ることができました。」

手掛けたことのない
大型部品生産の難しさ

早速、谷口はNISSHAの技術で生産が可能か会社に戻って検討を始めた。だが、社内で最初に相談を受けた設計・生産の技術者は、皆、話を聞いた瞬間絶句した。

その大きな理由は、インパネの大きさだった。
プラスチック成形用のフィルムは、グラビア印刷機の内部で円筒形のインキの付いたシリンダー(ハンコ)が回転することによって印刷する。つまり、ハンコの円周よりも大きな部品は、物理的に印刷できないのだ。しかし、今回の部品は、当社の機械で印刷できる、ギリギリの大きさだった。ハンコが大きくなればなるほど、印刷時のハンコの回転時間と距離が長くなるため、わずかな印刷の『ズレ』など、各種の不良が発生する確率も飛躍的に上昇する。にもかかわらず、今回のパーツ部品は、カーナビなどの装置の操作のためにパネルに細かい文字をいくつも印字する仕様で、ほんの少しの『ズレ』も発生することは許されなかった。
しかし、彼らが絶句した理由はそれだけではなかった。2つ目の理由、それはインパネがちょうどカーナビと重なる部分、そこにユーザーがタッチパネルで操作するための大きな透明の窓を作る必要があったのだ。



「通常、カーナビをはめ込む画面の部分は、ドクターブレードと呼ばれる刃でハンコのインキを掻き落とすことによって、完全な透明の状態にするのですが、大きな部品に対応するためハンコの回転半径が大きくなることによって、その刃が掻き落とす力が弱くなり、インキがついてはいけない透明な場所に付着する可能性が高まる。そのためドクターブレードの調整も、たいへん困難になるだろうと予想された。」
そう語るのはフィルム印刷を担うチームの長尾だ。

そしてもう1つ、3つ目の壁があった。それはお客さまから提示されたインパネの色見本の、ユーザーに高級感を感じさせる黒い光沢のあるきらめき、「ラメ感」を出すことだった。
印刷する転写箔の開発を担当する吉永は次のように語った。「お客さまからいただいた色見本は、プラスチックの表面に塗装で作られていました。塗装の場合インキに厚みがでるので、美しいパール感のあるインキが、見る角度によって反射してキラキラ光る質感を備えていました。実はその質感が当社のグラビア印刷方式だとなかなか出ず、比較的単調な風合いになってしまうのです。」

立ちはだかる大きな3つの壁を前にして、諦めることもできただろう。
しかし、それらを打ち破るべく、2人が取り組んだのはまさに技術者として王道の解決策だった。

「今までのやり方にとらわれず、新たな方法を全て試す」

長尾と吉永の2人はこの3つの課題を前に、印刷機の設定で変えられるすべての条件を変えて何度も試作に取り組んだ。まず取り組んだのは、シリンダーに刻む溝の深さや、ドクターブレードの刃が正確にインキを掻き出すための調整だった。だが、解決のためには印刷に使用するインキ自体の改良にも取り組む必要があった。
「インキの中に特殊な添加剤を入れることでキラキラと光を反射する風合いを出すことや、ドクターブレードの刃がインキを正確に掻き落とせるよう材料の構成そのものを変えました。約3ヶ月かけて試作したインキは、20種類を超えましたね。」
数々の試作を繰り返した2人は、必ずできるという執念の甲斐もあり、一つひとつ課題を解決し、3か月後ついに、常識破りのデザインのインパネ用フィルムの印刷にようやく目処が立ったのだった。

独自の印刷技術と検査技術で
強いアピール

何とかお客さまの要望するパネルを作れる見込みは立ったものの、量産する体制の構築にはさらなる問題が立ちはだかった。グラビア印刷による加飾フィルムの生産では、ピンホールと呼ばれる針の穴ほどの小さな白抜けが発生することがある。部品が大きくなればなるほど、その発生確率は増える。
NISSHAでは出荷前の最終検品において、それまで全て人の目でピンホールの有無の確認を行っていたが、今回のインパネでは、部品の大きさや生産量を考えても、目視による検品では対処できないことが確実だった。
そこでピンホールの「自動検査機」の開発を担当することになったのが、成形技術部 設計グループのエンジニアを務める真田だ。しかし、NISSHAでIMD成形品分野の製品で、このレベルの自動検査機を製作した経験はない。どのようにピンホールを検出するか、機器の仕様をどうするか、全くゼロの状態から検討を始める必要があった。

非常に小さなピンホールを発見することは、人間の目では難しいことはわかっていた。しかしながら、たとえ機械であっても、このサイズの検査をすることは容易ではなかった。この課題をクリアするためには、ピンホールを可視化する照明条件、ピンホールを確実に捉えられるカメラ、見つけたピンホールを「不良」と判断するためのプログラム、これらすべてを開発し、IMD製品の検査装置として一体化させることが必要であった。いずれのハードルも容易なものではなかった。

「今までのやり方ではいけない」

そういう思いが皆にあった。

「ピンホールの検出の方法としては、フィルムの後ろから光を当て、それを高解像度の特殊なカメラで撮影して検査する方式を採用しました。簡単に言えば柄が印刷されていて本来は光を通してはいけないはずの場所に光を検知したら、そこにピンホールがあると見なす仕組みです。カメラで検査をするには、どういう光であれば人間がそれをピンホールと判断するのか、不良の定義を考えるところからスタートしました」

開発は、社内のリソースだけで完成まで持っていくことは難しいため、外部の機器メーカーにも協力を仰ぎ、綿密な打ち合わせを行い進めていくことになった。
自動検査機にはもう1つ、重要な要件があった。今回のプロジェクトでは、自動車メーカーのグローバル生産体制に対応するため、加飾フィルムを日本の工場だけではなく、NISSHAの海外拠点の工場でも印刷し、最終検品して出荷する体制を整える必要があった。
そのためには、日本人だけではなく現地のスタッフにとっても使いやすい装置でなければならない。マニュアルや操作画面の表示が英語であることはもちろんだが、国や文化が違っていてもどういう機器であれば使いやすく、何より正確な検査をしてもらえるかを、常に念頭におきながら開発を進めました」
こうして、1年間の技術者の努力の末に完成したNISSHA初の自動検査機は、日本だけでなく海外の工場にも無事設置された。自動検査機の性能は高く、圧倒的に正確に、そして効率的に不良の検出が可能となり、製品の信頼性をさらに高めることにつながった。

「今回、自社でノウハウを生かしてNISSHA主導で自動検査機を開発できたのは、今後の我々の新規の案件獲得にとっても非常に意味があったと思います」と営業の谷口は述べる。

「自動車の内装デザインの世界的な潮流を見ても、今後は間違いなく我々が製作したようなシームレスで継ぎ目のない部品へのニーズが主流となっていくはずです。今回と同じ大型のサイズでもプラスチックの成形品を作ることができるメーカーは他にもあります。しかし、高い精度で文字や透明部分の位置合わせを行いながら加飾と成型を一度にできるメーカーは、世界でもNISSHAだけだと思います。そして、自動検査の仕組みまで構築できたことで、NISSHAの技術は、自動車の内装部品の市場に力強くアピールできる新たなステージに進化したと考えています」

グローバル水準で
生産体制を支えるために

ものづくりは技術でお客さまの期待に応えただけで終わりではない。インパネは無事自動車に組み込まれてこそ完成といえるのである。そのためには、世界各地で生産される組み立て工場に向けて、NISSHAの海外拠点からも品質の高い製品を出荷しなくてはならなかった。
国内外で印刷した加飾フィルムをアメリカやマレーシアにあるNISSHAの海外拠点の工場に納入し、そこでプラスチックの成形と同時に加飾フィルムの絵柄を転写してインパネになる。その後、NISSHA同様に自動車メーカーから直接発注を受けてカーナビやオーディオ機器を生産する大手電器メーカーの製品と一体化して完成品となって自動車に取り付けられる。
それらに関わる各社と自社工場との間を取り持って、生産スケジュールと品質管理に当たったのが、品質保証部の水谷だ。
「アメリカの成形工場で量産が始まったのが昨年の1月で、マレーシア工場では昨年の夏に生産がスタートしました。スムーズな生産体制を構築するために、私を含めたチームのメンバーは何度も海外工場に足を運び、現地スタッフとすり合わせを行いました。日本では当たり前の作業だとしても、彼らにきっちりと説明して理解してもらいお客さまの要求に応える作業をしてもらうためです。」
また、今回採用された車種が100か国以上で販売されることから、こんな苦労もあったそうだ。
「パネルに記載する文字やロゴも販売される国や地域別を考慮して25パターンも作る必要がありました。これも、今回の製品だけの異例の対応といえるでしょう。NISSHAの工程から無事出荷された製品が、年間に約25万台もの自動車に搭載され、今現在、世界中を走っていると考えると、感慨深いものがありますね。」

さいごに ~完成の後日談とNISSHAの仕事の魅力~

あるプロジェクトメンバーはこのインパネが完成した時、先方のデザイナーから言われた一言が忘れられないという。
『私の10年越しの夢が、NISSHAのおかげで叶いました』
デザイナー曰くは、10年以上前からシームレスな内装デザインを考えていたのだが、技術的に実現できるプラスチック成形メーカーが、NISSHA以外に存在しなかったのだ、と。

NISSHAのエンジニアたちが、自社の製品を表す時によく言うのが「一品一様」だ。お客さまがNISSHAに求める製品は、その用途によって形やデザイン、素材、機能などすべてが異なる。だから、それぞれの要求ごとに、製品を作るための技術もさまざまに必要となる。しかし「だからこそ、苦労はしても、エンジニアとして飽きることはない」と多くの技術者は考えている。そんな技術者に求められる人物像として、大切なことは「新しいことに挑戦しよう、というマインドを持っている」ことだろう。

最後に、この開発の物語を自動検査機を製作した真田の言葉で締めくくろう。
「一般的にエンジニアは、自分が大学で勉強してきた分野に特化してこだわる傾向があると思います。自分の専門領域ならば知識もありますし、経験も豊富ですからね。しかしNISSHAのように、常にお客さまから新たなオーダーを受け、これまでにない製品を生み出すことが求められる世界では、過去の成功体験へのこだわりが邪魔になることもあります。私自身も大学では金属材料の研究をしてきましたが、自分が知らない分野でも思い切って飛び込んで、貪欲に知識を吸収して仕事につなげる意欲が求められると感じています」

NISSHAを含め、多くの日本企業は海外での販売比率がますます高まり、営業だけでなく、エンジニアも海外に行くことが当たり前という時代がやってきた。 この広い世界にあるいろいろな業種・業界のものづくりに携わりたい、そして、お客さまの熱意ある要望に応えるために、自分たちが挑戦し、少しでも要望に近づける提案をしたい、そんな仕事に興味を感じたなら、ぜひNISSHAにエントリーしてほしい。