呼気中アセトアルデヒド/エタノールの測定

先制医療の促進に貢献する技術

飲酒後、アルコールの代謝によって体内で発生するアセトアルデヒドは、食道がん、頭頸部がんの原因物質であり、さまざまな健康被害を引き起こします。発生したアセトアルデヒドはアルデヒド分解酵素ALDH2によって分解され無害化されますが、その分解能力は遺伝子型による差があるため、食道がんや頭頸部がんの発症リスクは、アセトアルデヒドの分解能力の個人差に影響されます。また、アルコールが関連する種々の疾病においてもアルコールの代謝能が関与していると考えられています。
そのため、アルコールの代謝能の個人差を測定する際の指標として、「アセトアルデヒド/エタノールの濃度及び濃度比(A/E比)」が注目されています。「A/E比」を血圧や採血情報と同じように簡便に測定し定量化することにより、各個人が自身のアルコール代謝能を知り、生活習慣の改善によるがん発症率やアルコール中毒の低減などにつながることが期待されます。さらに、学校検診や一般検診に取り入れることで、健康な社会の実現を目指す先制医療の分野での利用が期待されています。

NISSHAの取り組み

呼気中のアセトアルデヒドを高精度に検出する測定器の研究開発

NISSHAは、医療やヘルスケアなどの成長市場に向けて、技術開発を加速させるとともに新たなコア技術の獲得や新規市場への販路を求め、医療分野での研究開発に取り組んでいます。
当社が保有するガスセンサー技術、生体ガス計測技術を活用し、京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学講座 武藤学教授との共同研究により、呼気中のアセトアルデヒド/エタノール測定器の開発を進めています。この機器は、少量のアルコール摂取1分後に体内で発生した微量のアセトアルデヒドとエタノールを「呼気」から検出して濃度測定し、「A/E比」として数値化します。呼気ガスを計測することにより、アセトアルデヒドを低侵襲、高精度、簡便に測定することが可能です。
当社は、製品化と医療機器認定取得を目指し量産モデルの設計開発、各種性能試験を実施しています。
同時に、京都大学はじめ大学病院を中心とする医療現場での応用研究開発が行われており、先制医療の分野での利用が期待されています。

共同研究:京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学講座 武藤教授のコメント

武藤 学教授

武藤 学教授

がん医療においては「がんにならない」という一次予防が重要視されていますが、がん全般での実現は困難です。
食道がんの原因のひとつとして、アルコール飲料の代謝産物である「アセトアルデヒド」が発がん物質とされていますが、NISSHAが開発する機器は、微量なアルコールを摂取し、わずか1分後の呼気を測定するだけで極めて微量のアセトアルデヒドを高い精度で検出できる革新的な測定器です。
この技術を使用することで、自身の体内に発生する発がん物資の量を知ることができ、食道がん予防に大いに役立つと考えられます。さらに、アルコール代謝能も数値化として判定できるため健康管理にも役立つと期待しています。
医療業界において「呼気診断」は低侵襲な検査と期待されていますが、まだ発展途上の分野です。すでに吸着性が高い呼気成分も効率よく回収できるバッグをはじめ、測定に必要な一連の器具の開発や、病気と相関する新しい基準の設定を進めています。医師であり研究者である私としては、このような革新的測定器を実臨床で活用していくことがより良い医療につながると考えています。
略歴
1991年:福島県立医科大学 卒業
1991年-1995年:いわき市立総合磐城共立病院(福島県) 内科/消化器内科
1995年-2007年:国立がんセンター東病院(現:国立がん研究センター東病院)
2007年-:京都大学医学部附属病院 消化器内科 准教授
2012年-:京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座教授
       京都大学医学部附属病院がん薬物治療科科長

お問い合わせ

ご要望やご質問があればお気軽にお問い合わせください。

Page top