DX戦略および推進体制

はじめに

当社グループは、メディカル、モビリティ、サステナブル資材、IT機器の重点市場を中心に、コア技術を活用して特徴ある製品を提供しています。当社グループにとって、デジタル技術は自社の生産性向上に加え、お客さまに提供する付加価値の向上や社会課題の解決にもつながるものであり、その活用の巧拙が競争力に大いに影響するものと考えています。

当社グループは、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョン(長期ビジョン)として示しています。メディカル、モビリティ、サステナブル資材の重点市場で提供する価値を向上することで、売上高3,000億円規模、ROE15%以上を達成するとともに、2050年カーボンニュートラルを見据えたCO2総排出量の30%削減(2020年比)を実現し、当社グループがMissionで志向する「人々の健康で豊かな生活に貢献する企業」となることを目指します。

(重点市場で提供する価値向上の例)
メディカル市場:当社の加工技術やデジタル技術(ICT, IoT, AIなど)により、医療機器の価値・性能の向上を目指します。
モビリティ市場:ユーザーインターフェースやセンシングなどのデジタル関連の分野において、製品の充実を図ります。

NISSHAのDX

当社グループでは、DXを以下のように定義しています。

NISSHAは、デジタル技術を活用して生産性を向上させるとともに、お客さまに提供する付加価値の向上や、社会課題を解決する製品・サービスを提供します。
デジタル技術は、これらの活動を支える社内外の状況認識や科学的な意思決定にも不可欠です。
デジタル技術を用いて、事業活動を加速し、企業価値を向上させるのがNISSHAのDXです。

NISSHAのDX戦略

当社グループでは、以下の3つのステップで段階的にDXを推進するとともに、それを支える環境整備や人材育成に取り組みます。
目的 目標・手段
STEP 1 コスト(インプット)削減 社内の業務プロセスのデジタル化により、生産性を向上させます。これによって確保したリソースを高付加価値業務へ再投入します。
STEP 2 付加価値(アウトプット)増大 組織全体へデジタル化を拡張し、蓄積されたデータを活用してお客さまに提供する付加価値を向上させます。
STEP 3 新しい付加価値(アウトプット)創出 蓄積されたデータやノウハウと、デジタル技術の活用で、新たな付加価値の創出、社会課題の解決に貢献します。
STEP1の取り組みとして、内製のプログラムに加えて、RPA*や業務フロー電子化ソフト、BIツール*などを利用して、効率的に業務プロセスのデジタル化を進めています。
2019年にそれらデジタル化ツールを本格導入し、大量の作業が効率化、自動化されており、これによって確保したリソースを高付加価値業務へシフトさせています。

STEP2の取り組みとして、生産部門ではIoTにより蓄積したデータを活用した品質管理の高度化や、AIによる製品の品質判定の高精度化、ロボットを活用した出荷業務の自動化などの取り組みを進めています。

さらに、設計・開発部門では、過去の品質情報や生産情報の数値化を行い、AIによる最適設計提案といった設計業務の支援システム構築や、営業活動の支援として、自動見積システムを構築しました。

これらの活動を通じて、コスト削減だけでなく、品質の安定化や誤出荷の防止、見積回答期間や注文から出荷までの期間の短縮など、お客さまにとっての付加価値向上につながる成果を上げています。

今後も継続してDXの取り組みを発展させ、新しい付加価値の創出や社会課題の解決に貢献していきます。

*RPA:Robotic Process Automation。ソフトウェアロボットを使用して、定型的な業務を自動化する技術。
*BIツール:Business Intelligence Tool(ビジネスインテリジェンスツール)の略。企業内の意思決定を助けるために、蓄積されたデータを活用して分析・見える化するソフトウェア。

DX推進体制

人材育成

当社グループは、DX推進を担う「DX人材」の育成に注力しています。

データエンジニアやデータサイエンティストの育成を継続するとともに、2023年度よりビジネス課題とデジタル技術をつないで事業変革を推進する「ビジネストランスレーター」の育成を目指し、BPM*の教育を進めています。これらのDX人材の能力を結集し、生産性向上、お客さまへの付加価値向上の取り組みを推進します。

育成の手段として、オンライン教育プラットフォームや社内講師による座学中心の基礎講座を行うとともに、チームによるDXプロジェクトの立ち上げを推奨し、実践による人材の育成を進めています。

さらに、当社は2023年5月、国立大学法人滋賀大学(以下、滋賀大学)とデータサイエンス分野での産学連携およびDX人材の育成に関する包括連携協定を締結しました。滋賀大学への社員派遣や、滋賀大学からのインターン学生受け入れなど、人材交流を進めることで当社のDX人材の育成を加速させます。

*BPM : Business Process Management(ビジネスプロセスマネジメント)

環境

当社グループでは、人材の育成に加えて、IT担当者だけでなく幅広く現場の人材が活躍できる環境を整備し、DXを効果的に推進しています。 例として、以下のような環境整備を行っています。
  • 社内向けのWeb API*やサーバー
  • RPAをはじめとした複数のローコードツール*
  • ナレッジを共有するためのコミュニティ

加えて、当社グループは、社内外の課題解決のために必要と判断した場合には、それを可能とするITインフラ・ツール等に積極的かつ迅速に投資を行い、DXを推進していきます。

例えば、ビッグデータを活用してシミュレーションを可能にするための多次元データベースや、デジタルツイン*のソフトウェアなど、用途に応じて多様なITインフラ・ツールを導入しています。

同時に、包括連携協定を締結している滋賀大学と製品検査のための画像判定AIを共同で開発するなど、システムの内製化を進めています。 ツールを導入するか内製で開発するかは、状況に応じて適切に判断し決定しています。

*Web API:Web技術を用いて、ソフトウェアの機能の一部を別のコンピューター上で利用できるように共有する仕組み
*ローコードツール:必要最小限のプログラムコードでアプリケーション開発ができるツール
*デジタルツイン:現実の世界から収集した情報を仮想空間で再現する技術のこと

管理体制

  • DX推進室は全社DX戦略の方向性を立案するとともに、人事部と連携してDX推進に向けた人材育成を担当します。
  • IT部はITインフラ環境・ガバナンスの整備を支援します。
  • 具体的なDX戦略の立案、実施は事業部が行います。

推進状況の管理

DXの推進状況を管理するため、以下のKPIを設定し、定期的にレビューしています。
  • ITインフラの構築・改善の計画に対する進捗度
  • DXテーマの計画に対する進捗度
  • DX人材の育成計画に対する進捗度

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